沖縄本島に次いで2番目に大きな島、西表島(いりおもてじま)。島の約90%が亜熱帯のジャングルに覆われ、「東洋のガラパゴス」とも呼ばれる手つかずの自然が残る場所です。その独自の生態系が評価され、2021年には奄美大島、徳之島、沖縄島北部と共にUNESCO世界自然遺産にも登録されました。
この島の最大の魅力は、マングローブの川をカヌーやカヤックで進み、ジャングルをトレッキングして訪れる無数の滝(ウォーターフォール)たちです。島内には100を超える滝があると言われ、その姿はまさに圧巻の一言。
この記事では、世界遺産の島で最高の滝めぐり体験をするために必要な情報を完全網羅。石垣島からのアクセス方法、目的別の滝の選び方と詳細な魅力、具体的なモデルコース、ツアー予約のコツ、服装と持ち物、そして最も重要な自然環境を守るためのルールとマナーまで、あなたの西表島旅行を完璧にサポートします。
1. 西表島へのアクセス:石垣島からのフェリーが唯一のルート
西表島には空港がありません。そのため、日本各地からまず石垣島へ飛行機で向かい、そこからフェリーに乗るのが唯一のアクセス方法です。
- Step 1: 新石垣空港へ
東京(羽田/成田)、大阪(関西)、名古屋(セントレア)、福岡など日本の主要都市から石垣島への直行便が運航しています。LCC(格安航空会社)を利用すれば、お得にアクセスすることも可能です。 - Step 2: 空港から石垣港離島ターミナルへ
空港に到着したら、西表島行きフェリーの発着地である「石垣港離島ターミナル」へ移動します。- バス: 所要時間約30〜45分。料金は500円前後と最もリーズナブルです。
- タクシー: 所要時間約25分。料金は約3,000円です。グループでの移動に適しています。
- Step 3: フェリーで西表島へ
離島ターミナルから西表島へは高速船で約40〜50分。西表島には大きく分けて2つの港があり、参加するツアーや宿泊場所によって利用する港が異なります。GWや夏休みシーズンは大変混雑するため、各フェリー会社の公式サイトでの事前予約が確実です。
| 港名 | 位置 | 特徴 | ツアーの利便性 |
|---|---|---|---|
| 上原港 | 島の北側 | 北風の影響を受けやすく、特に冬場は欠航が多い。 | ピナイサーラの滝など、人気アクティビティツアーの集合場所に近い。 |
| 大原港 | 島の南東側 | 生活航路のため欠航が少なく、運航本数も多い。 | 仲間川マングローブクルーズや由布島観光に便利。 |
【重要注意点】 上原港行きが欠航した場合、大原港まで行き、そこから路線バスで上原方面へ移動する必要があります。しかし、この路線バスは1日4往復のみと非常に本数が少ないため、移動に大幅な時間がかかります。特に冬場に上原港周辺のツアーを予約している場合は、旅程に十分な余裕を持を持たせましょう。
2. 【目的別】西表島のおすすめ滝9選 完全紹介
西表島の滝は、カヌーと組み合わせるものから、トレッキングだけで行けるものまで様々です。あなたのアドベンチャーレベルや体力に合わせて、訪れたい滝を選びましょう。
| 滝の名前 | カテゴリー | 体力レベル | 所要時間(往復) | 子連れ推奨度 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| ピナイサーラの滝 | カヌー&トレッキング | ★★★☆☆ | 約4〜5時間 | 小学生以上 | 沖縄最大の落差。滝つぼと滝上からの絶景 |
| サンガラの滝 | カヌー&トレッキング | ★★☆☆☆ | 約3時間 | ◎ | 滝裏に入れるユニークな体験。ファミリー向け |
| 水落ちの滝 | カヤック | ★★☆☆☆ | 約4時間 | 小学生以上 | 船でしか行けない秘境。冒険心をくすぐる |
| クーラの滝 | トレッキング | ★☆☆☆☆ | 約30分 | ◎ | 初心者向け。モダマの巨大ブランコが人気 |
| ゲータの滝 | 沢登り | ★★★☆☆ | 約2時間 | 小学生高学年以上 | 複数の滝を見られる美しい沢登りコース |
| マリュドゥの滝 | 遊覧船&トレッキング | ★★☆☆☆ | 約3時間 | ◯ | 日本の滝100選。展望台から眺める |
| カンピレーの滝 | 遊覧船&トレッキング | ★★☆☆☆ | 約2.5時間 | ◯ | マリュドゥの滝の先にある神聖な場所 |
| ユツンの滝 | トレッキング | ★★★★☆ | 約4時間 | 中学生以上 | 健脚者向け。ジャングルと海のパノラマ絶景 |
| マヤロックの滝 | トレッキング | ★★☆☆☆ | 約1.5時間 | ◯ | ユツンへの道中にある静かな「双子滝」 |
カテゴリーA:カヌー/カヤック&トレッキングで訪れる滝
ピナイサーラの滝
沖縄県最大の落差(約55m)を誇る、西表島を代表する滝。マングローブの川をカヌーで進み、亜熱帯のジャングルをトレッキングして滝つぼへと向かいます。体力に自信があれば滝の上を目指すコースもあり、そこから見下ろす広大なマングローブ林とサンゴ礁の海の絶景は、まさに圧巻の一言です。
サンガラの滝
滝の裏側に入ることができるユニークな体験が魅力の滝。落差は小さいですが、その分水遊びがしやすく、子供から大人まで楽しめます。カヌー、短いトレッキング、滝遊びを手軽に楽しめるため、ファミリーに最適なコースです。
水落ちの滝
公共の港から船でしか行けない「船浮(ふなうき)」という集落のさらに奥にある秘境の滝。カヤックを漕ぎ進めてアクセスする、冒険心をくすぐる特別な体験ができます。
カテゴリーB:トレッキング(ハイキング)で訪れる滝
クーラの滝

片道わずか15分の短いトレッキングで到着できる、初心者向けの癒やしの滝です。 落差5mほどの小さな滝ですが、ひっそりと自然の中に佇む神秘的な雰囲気に包まれており、ゆっくり座って眺める時間は贅沢そのもの。 滝の向かいには、世界最大の豆「モダマ」の巨大な蔓が自然にできたブランコがあり、絶好の写真スポットとして人気です。
ゲータの滝

片道1時間ほどの沢登り(リバートレッキング)で向かう、アドベンチャー感あふれる滝。このコースの魅力は、ゴールだけでなくその道のりの美しさ。西表島の植物たちが作り出す深い緑の世界を楽しみながら、ゴールまでに3つの異なる雰囲気の滝を見ることができます。登りきった人だけが見られる絶景は、最高の思い出になるでしょう。
マリュドゥの滝 & カンピレーの滝

西表島中央部を流れる浦内川の上流にある2つの滝。「マリュドゥの滝」は「日本の滝100選」にも選ばれた美しい滝で、展望台からその全景を眺めます。そこからさらに15分ほど歩くと、長さ約200mにわたって巨大な岩の上を水が激しく流れる「カンピレーの滝」に到着します。カンピレーとは方言で「神の座」を意味する神聖な場所です。このコースは浦内川の遊覧船で登山口まで行くため、個人でも比較的安全に訪れることができます。
ユツンの滝

歩くことが好きな健脚者におすすめの本格的なジャングルトレッキングコース。片道2時間弱、苔むした幻想的な森や、想像を超える大きさの一枚岩の上を歩くなど、道中も魅力に溢れています。ゴールにあるユツンの滝は迫力満点の三段滝。標高250mの滝の上から見渡す壮大な空、海、ジャングルの360度パノラマは、長く険しい道のりを乗り越えた者だけが見られるご褒美です。
マヤロックの滝

ユツンの滝へ向かう道の途中にある、片道約45分の穴場スポット。2本の滝が隣に並んで流れる姿から「双子滝」とも呼ばれています。比較的訪れる人が少ないため、静かに滝を眺めてのんびりしたい人におすすめです。
3. 【モデルコース】西表島滝めぐりプラン
具体的な旅のイメージが湧くように、目的別のモデルコースを提案します。
【石垣島からの日帰り弾丸コース】
アクティブに西表島のハイライトを楽しみたい方向け。
- 午前: 石垣港から始発便のフェリーで上原港へ → ピナイサーラの滝(半日ツアー)に参加。カヌーとトレッキングで西表島の自然を凝縮体験。
- 午後: ツアー終了後、上原港周辺で昼食。時間があれば、星砂の浜を散策。
- 夕方: 上原港から最終便の一つ前のフェリーで石垣島へ戻る。
【1泊2日でのんびり満喫コース】
滝だけでなく、西表島の他の魅力も楽しみたい方向け。
- 1日目: 石垣港から大原港へ → 仲間川マングローブクルーズに参加 → 昼食後、水牛車で由布島観光へ。夜は南部の宿に宿泊し、天気が良ければ満点の星空観賞。
- 2日目: 路線バスやレンタカーで上原地区へ移動 → サンガラの滝(半日ツアー)に参加し、滝遊びを満喫 → 昼食後、上原港からフェリーで石垣島へ。
4. ツアーの選び方と予約ガイド(英語対応あり)
西表島のジャングルは、道が不明瞭で天候も変わりやすく、個人で立ち入るのは非常に危険です。安全に自然を満喫するため、現地のプロであるガイドツアーへの参加を強く推奨します。
- ツアーの種類: カヌー、トレッキング、SUP、キャニオニングなど。複数のアクティビティを組み合わせた1日ツアーや、半日ツアーがあります。
- 予約方法: 多くのツアーは事前予約制です。各ツアー会社のウェブサイト、電話、EmailやWhatsAppなどのメッセージアプリで予約できます。
- 英語対応: 海外からの旅行者向けに、英語でガイドを行うツアー会社もあります(例:「Hanauta」など)。予約時に英語対応が可能か確認しましょう。
- プライベート(貸切)ツアー: 他のグループを気にせず自分たちのペースで楽しめるため、小さな子供連れの家族や体力に不安がある方に最適です。写真データ無料などの特典が付くこともあります。
5. 持ち物&服装パーフェクトチェックリスト
ジャングルでのアクティビティは、濡れることを前提とした準備が重要です。
- 服装: 水着の上に、ラッシュガードや化繊のTシャツ・ズボンなど、速乾性のある服を着用。綿素材は乾きにくく体を冷やすため避けましょう。
- 靴: 滑りにくいマリンシューズやトレッキングシューズが必須です(多くのツアーでレンタル可能)。
- 必須の持ち物:
- 帽子、サングラス(日差し対策)
- タオル
- 飲み物(熱中症対策。マイボトル持参を推奨)
- 日焼け止め、虫よけスプレー(サンゴに優しいなど、環境配慮型の製品が望ましい)
- その他: 眼鏡バンド、防水バッグ(貴重品保護のため。ツアーでレンタルできる場合が多い)
6. 世界遺産を守るためのルールとマナー
西表島の貴重な自然と文化を未来へ引き継ぐため、すべての旅行者に以下のルールの遵守が求められます。
- 安全のために
- 天候確認: 山や川の天気は変わりやすいため、気象情報を常に確認し、危険を感じたら引き返す勇気を持ちましょう。
- ライフジャケット着用: カヌーやSUPなど水上アクティビティでは必ずライフジャケットを着用してください。
- ガイドとの同行: 安全確保のため、整備された一部のコースを除き、単独でのトレッキングは避け、必ずガイドと同行してください。
- 自然環境と地域への配慮(エコツーリズム)
- 野生生物を守る: イリオモテヤマネコなどの希少動物を守るため、島内の車の速度は時速40km/hを厳守。野生動物に絶対に餌を与えないでください。
- ゴミは必ず持ち帰る: 島には十分なゴミ処理施設がありません。自分が出したゴミはすべて持ち帰りましょう。
- 自然を傷つけない: 動植物を採ったり、サンゴを踏んだりしないでください。また、外来種を持ち込まないよう、森に入る前は靴の泥をしっかり落としましょう。
- 地域住民への敬意: 集落は住民の生活の場です。濡れた服装のまま店に入らない、静かに行動するなど、マナーを守りましょう。
7. よくある質問 (FAQ)
Q. 西表島観光にレンタカーは必要ですか?
A. 必須ではありませんが、あると行動範囲が格段に広がります。路線バスは本数が非常に少ないため、宿泊や食事場所への移動、複数のエリアを観光したい場合はレンタカーが便利です。ただし、台数に限りがあるため繁忙期は数ヶ月前からの予約が必須です。
Q. ツアーに参加しないと滝は見られませんか?
A. クーラの滝や、遊覧船を利用するマリュドゥの滝・カンピレーの滝は個人でもアクセス可能です。しかし、ピナイサーラやゲータの滝など、道が不明瞭で危険を伴う場所は、安全確保のため必ずガイド付きツアーに参加してください。
Q. 雨の日でもツアーは催行されますか?
A. 小雨程度であれば催行されることが多いです。ジャングルの中は雨に濡れると一層神秘的な雰囲気が増し、それもまた魅力です。ただし、大雨による増水や強風、雷などの警報が出た場合は、安全を第一に中止となります。中止の判断は催行会社に確認してください。
最高の西表島アドベンチャーを計画しよう
西表島の滝めぐりは、ただ美しい景色を見るだけでなく、島の雄大な自然そのものを五感で感じる特別な体験です。
成功の鍵は「早めの計画」です。特にゴールデンウィークや夏休みなどの繁忙期は、航空券、宿泊先、レンタカー、そして人気のツアーはすぐに予約で埋まってしまいます。できるだけ早く計画を立て、予約を済ませましょう。
この記事を参考にしっかりと準備をし、自然への敬意を忘れずに、あなただけの忘れられない冒険へ出かけてください。





