東京の銭湯・温泉完全ガイド【2025年版】:マナー、タトゥー、料金を徹底解説
東京は未来的な高層ビル群や最先端のカルチャーで知られていますが、その喧騒のすぐそばに、古くから続く日本の「癒やし」の文化が息づいています。それが銭湯(Sento)と温泉(Onsen)です。火山活動が活発な日本には多くの天然温泉が存在し、入浴は健康増進やリラクゼーションとして生活に深く根付いています。
東京のような大都市にも、こうした伝統的な入浴文化を体験できる場所が数多く存在します。手頃な価格で地域住民の生活に触れられる老舗の銭湯から、モダンな設備が整った最新のスパリゾートまで、その形態はさまざまです。
しかし、日本の公衆浴場を初めて利用する外国人旅行者にとって、独特のルールやマナーは大きな懸念事項となります。特にタトゥー(入れ墨)の有無や、施設による料金体系の違い、必要な持ち物についての正確な理解は、快適な体験のために不可欠です。この記事では、東京で最高の入浴体験をするために必要な情報を網羅してご紹介します。
1. 銭湯・温泉・スーパー銭湯:3つの違いと料金体系

日本の入浴施設には大きく分けて「銭湯」「温泉」「スーパー銭湯」の3種類があり、その料金体系は大きく異なります。「手頃な価格(500円程度から)」という表現は、すべての施設に当てはまるわけではないため、この違いを理解することが重要です。
A. 銭湯(Sento):地域のコミュニティハブ

銭湯は、地域住民の日常生活のために設けられた公衆浴場です。歴史を感じる老舗の銭湯も多く、日本の文化と歴史に触れる素晴らしい体験ができます。
特徴:
- 地域密着型で、古き良き日本の文化を感じられます。
- 東京には「黒湯」と呼ばれる、美肌効果が期待される黒褐色の天然温泉を引いている銭湯も多く存在します(例:戸越銀座温泉)。
- 浴室の壁に描かれた雄大な富士山のペンキ絵や、美しいモザイクタイルアートは、銭湯ならではの芸術です。
料金体系:
- 銭湯料金。料金は各都道府県によって上限が定められています。
- 東京都の大人料金(目安): 550円(2024年7月時点)。これは非常に手頃な価格です。
B. スーパー銭湯:一日中楽しめる温浴施設

スーパー銭湯は、多様な設備を備えた大規模な温浴施設です。家族連れや友人同士で一日中楽しむことを目的としています。
特徴:
- モダンな設備が整った最新のスパリゾートに近い形態です。
- 内湯、広々とした露天風呂、サウナ(遠赤外線サウナや塩サウナなど)、水風呂、ジャグジーなど、多様な浴槽を備えています。
- 岩盤浴、リラクゼーション(マッサージサービス)、レストラン、キッズスペース、休憩エリア(畳の部屋やリクライニングチェア)などが充実しています。
料金体系:
- 施設独自料金。入館料は銭湯の数倍となります。
- 1日利用の料金目安: 約2,500円~3,000円以上。(例:SAKURA、テルマー湯、江戸遊など)
C. 温泉(Onsen):自然の恵み

温泉は、地熱で温められた水が湧き出す「天然温泉」を使用していることを指します。
特徴:
- 「銭湯」や「スーパー銭湯」が、天然温泉を使用している場合があります(例:戸越銀座温泉)。
- 地方に行けば「温泉旅館」(Ryokan)があり、宿泊とセットで楽しむのが一般的です。
- 都市部では、日帰り温泉施設として「スーパー銭銭湯」の形態をとっていることが多いです。
料金体系:
- 施設の形態(銭湯か、スーパー銭湯か、旅館か)によって全く異なります。
【結論】 550円程度で体験したい場合は「銭湯」を、一日中リラックスしたい場合は「スーパー銭湯」を選ぶ必要があります。
2. タトゥー(入れ墨)に関する利用可否ルール

外国人観光客にとって、タトゥー(入れ墨)が入浴を拒否される最大の懸念事項です。
日本では、歴史的な背景から、多くの温泉や公衆浴場でタトゥーが禁止されている場合があります。
しかし、近年ではインバウンド観光客の増加に伴い、タトゥーフレンドリーな浴場(特に銭湯)が増加しています。利用を拒否されるという不快な体験を避けるために、以下の準備が強く推奨されます。
- 施設ポリシーの確認:
 訪問前に、入浴施設(特にスーパー銭湯や温泉旅館)の公式ウェブサイトで「タトゥーポリシー」を必ず確認してください。「タトゥーフレンドリー(Tattoo Friendly)」や「タトゥーOK」と明記している施設を選ぶのが最も安全です。
- カバーアップ:
 小さなタトゥー(例:8cm x 13cm以内)であれば、カバーシール(防水性の肌色テープ)やスポーツテープで隠すことを条件に、入浴が許可される場合があります。シールはドラッグストアやオンラインで購入可能です。
- 個室風呂(貸切風呂):
 タトゥーがある場合や、そもそもヌードで他人と入浴することに抵抗がある場合は、一部の施設(主に温泉旅館や一部のスーパー銭湯)で提供されているプライベートバス(貸切風呂 / 家族風呂)の利用も選択肢の一つです。
3. 持ち物とアメニティ:無料か有料か?
「タオルやアメニティが充実している」という情報だけでは、それが無料の備え付けなのか、有料のレンタルや販売なのかが不明瞭です。銭湯とスーパー銭湯では、アメニティの提供方法に大きな違いがあります。
A. 銭湯(Sento)の場合
基本的には「すべて持参する」のがローカルのスタイルです。
タオル:
- 持参するのが基本です。
- ほとんどの銭湯では、タオルを有料で販売または貸し出しています。(例:大黒湯では貸タオルセット(大小)が130円)
アメニティ(シャンプー・石鹸):
- 備え付けがない場合も多いです(持参するか、小さな使い切りパックを購入します)。
- ただし、施設(例:大黒湯)によっては、リンスインシャンプーとボディソープが無料で設置されている場合もあります。
持ち物推奨リスト(銭湯):
- 小さいタオル(体を洗う用)
- 大きいバスタオル(体を拭く用)
- シャンプー、コンディショナー、ボディソープ
- 着替え
B. スーパー銭湯の場合
多くの場合、入館料にタオルやアメニティが含まれています(手ぶらでOK)。
タオル:
- 入館料にバスタオルとフェイスタオルのレンタル料が含まれていることがほとんどです。
アメニティ:
- シャンプー、コンディショナー、ボディソープは浴室内に無料で備え付けられています。
- 脱衣所にも化粧水、乳液、ヘアドライヤーなどが完備されていることが多いです。
4. 快適な入浴のための具体的なマナー(入浴作法)
公衆浴場(温泉・銭湯)は、皆が快適に過ごすための「お互いへの配慮」を重視する場所です。これは宗教的な儀式ではなく、衛生面とリラクゼーションのための機能的なルールです。
ステップ1:浴室に入る前のマナー(脱衣所・洗い場)
- 脱衣所でのヌード:
 浴場に入る前に、脱衣所(Datsuijo)ですべての衣類を脱ぎます。水着や下着の着用は禁止されています。(※一部の混浴施設やスパを除く)
- 身体を洗う(最重要マナー):
 浴槽(湯船)に入る前に、必ず「洗い場(Araiba)」で髪と全身を徹底的に洗います。これは浴槽の水を清潔に保つための最も重要なマナーです。
- 石鹸を完全に洗い流す:
 洗い終わったら、石鹸やシャンプーが浴槽に入らないように、身体をよくすすぎます。
- 長髪は結ぶ:
 長い髪はゴムなどでまとめて、湯船に浸からないようにします。髪がお湯に浮くのは他の利用者にとって不快とされます。
- 洗い場の片付け:
 洗い場は共有スペースです。自分が使った椅子や桶(おけ)は軽くお湯で流し、可能であれば元の場所に戻します。
ステップ2:浴槽内のマナー
- ゆっくり入る:
 浴槽のお湯は施設によりますが、40度から44度の高温の場合があります。心臓に負担をかけないよう、足元からゆっくりと入ります。
- タオルを湯船に入れない:
 浴室に持ち込んだ小さなタオル(体を洗う用)は、湯船の中に入れてはいけません。浴槽の水を汚さないようにするためです。タオルは、浴槽の縁や頭の上に置くのが一般的です。
- 静かに過ごす:
 浴場はリラックスする場所です。大声で話したり、走り回ったり、水しぶきを上げたりしないでください。長い会話は最小限に抑えます。
- 禁止行為:
 湯船の中で泳いだり、頭を沈めたり(潜ったり)、水遊びをしたりしてはいけません。
ステップ3:脱衣所に戻る際のマナー
- 水気を拭き取る:
 浴槽から上がり、脱衣所に戻る前に、持参した小さなタオルで身体の余分な水気を軽く拭き取ります。これは脱衣所の床を濡らさないための、他人への重要な配慮です。
その他の重要なルール
- スマートフォン/カメラの使用禁止:
 プライバシー保護のため、脱衣所や浴室でのスマートフォン(携帯電話)の使用や写真撮影は絶対に許可されていません。デジタルデトックスの機会として楽しみましょう。
- 飲酒後の入浴:
 飲酒して野外フィールドへ行くこと、また入浴することは非常に危険であり、厳禁です。
- お風呂上がりの一杯:
 入浴後は多くの汗をかいています。脱衣所や休憩所にある自動販売機で、伝統的な「フルーツ牛乳」や「瓶入りの牛乳」、またはビールを楽しむのは、日本の銭湯文化の醍醐味の一つです。
5. 【東京の癒やしスポット5選】施設別タトゥー・料金・アメニティ情報
東京で銭湯・温泉文化を体験できる施設のうち、タトゥーフレンドリーな施設や、料金カテゴリーの異なる代表的な施設をピックアップしてご紹介します。(※情報は変更される場合があるため、訪問前に必ず最新情報を各施設の公式ウェブサイトでご確認ください。)
1. 大黒湯(だいこくゆ) – タトゥーOKの老舗銭湯(押上)
東京スカイツリーのふもとにある、歴史を感じる老舗の銭湯です。木造建築の風情と、モダンにリノベーションされた快適さを両立しています。
- 特徴: 露天風呂、高濃度炭酸泉、サウナ(別料金)など設備が充実。深夜までの長時間営業も魅力です。
- タトゥーの可否: OK(公式に歓迎されています)
- 料金カテゴリー: 銭湯
- 大人料金(目安): 550円(東京都の銭湯料金) ※サウナ利用は別途料金
- アメニティ:
- リンスインシャンプー、ボディソープは無料設置。
- 貸タオルセット(大小)は130円でレンタル可能。手ぶらでの訪問も可能です。
 
2. 戸越銀座温泉(とごしぎんざおんせん) – 商店街で楽しむ黒湯(戸越)
日本有数の長さを誇る「戸越銀座商店街」の中にある、珍しい立地の銭湯です。美肌効果が期待される「黒湯」の天然温泉を楽しめます。
- 特徴: 渋谷からのアクセスが良好。商店街での食べ歩きとセットで楽しめます。内湯と半露天風呂で黒湯を満喫できます。
- タトゥーの可否: タトゥーフレンドリー
- 料金カテゴリー: 銭湯(天然温泉)
- 大人料金(目安): 550円(東京都の銭湯料金)
- アメニティ: 備え付けなし(有料販売・レンタルあり)。持参推奨。
3. テルマー湯(てるまーゆ) – 新宿の豪華スーパー銭湯
新宿・歌舞伎町の中心部に位置する、モダンな設備が整った最新のスパリゾートです。
- 特徴: 中伊豆から運搬される天然温泉、高濃度炭酸泉、岩盤浴、エステ、レストランが揃う豪華な施設。24時間営業(深夜割増料金あり)。
- タトゥーの可否: 原則禁止。ただし、指定のカバーシール(2枚まで、施設で販売)で完全に覆える場合のみ入館可とされています。
- 料金カテゴリー: スーパー銭湯
- 大人料金(目安): 約3,200円~(入館料)
- アメニティ: タオル、館内着、各種アメニティ(シャンプー、化粧水など)は全て入館料に含まれています。
4. 両国湯屋 江戸遊(えどゆう) – 和モダンなスーパー銭湯(両国)
相撲の街・両国にある、和モダンなデザインが特徴のスーパー銭湯です。
- 特徴: 6種類の浴槽と3種類のサウナ、広々とした休憩スペース(ハンモックやワーキングスペースも有)。
- タトゥーの可否: 原則禁止。
- 料金カテゴリー: スーパー銭湯
- 大人料金(目安): 約3,000円~(コースにより異なる)
- アメニティ: タオル、館内着、各種アメニティは入館料に含まれています。
5. SAKURA(サクラ) – 都会のオアシス(巣鴨)
「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる巣鴨に位置する、落ち着いた雰囲気のスーパー銭湯です。
- 特徴: 東京では珍しい、美しい琥珀色のナトリウム塩化物泉(天然温泉)を楽しめます。露天風呂は開放感があります。
- タトゥーの可否: 原則禁止。
- 料金カテゴリー: スーパー銭湯
- 大人料金(目安): 約1,320円~(平日料金)
- アメニティ: タオルは別途レンタル・販売。シャンプー、ボディソープは無料設置。
6. 日本の入浴文化を深く楽しむために
日本の公衆浴場(温泉や銭湯)は、単に身体の汚れを落とす場所ではなく、身体と心を癒やし、時には地域の人々と交流する「コミュニティの場」として機能してきました。
東京には、天然温泉(自家源泉)を楽しめる施設や、歴史を感じる老舗の銭湯、多機能なスーパー銭湯など、さまざまなスタイルの浴場があります。
料金体系やマナー、特にタトゥーに関するルールを事前に理解し、他の利用者に配慮することで、日本ならではの素晴らしいリラクゼーション文化を体験できるでしょう。ぜひ、東京の入浴施設で日々の疲れを癒やし、リラックスしたひとときをお過ごしください。








